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PCゲー『The Walking Dead』シーズン1クリア後レビュー(ネタバレ有)

2012年のゲームオブザイヤーにも選ばれたアドベンチャーゲーム『The Walking Dead』とはなんだったのか!?珍しく真面目にレビューする。

まったく役に立たないけどネタバレなしのファーストインプレッションは↓

 

洋ゲー『The Walking Dead』と呵責と利己的な遺伝子 - アニメ?ゲーム?語る?(仮)

 

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さてクリア後にはなんともいえない感情に襲われるこのゲームは

あえて答えるならば

インタラクティブの申し子

(以下ネタバレありです)

 

 

 ビデオゲームを構成する二大要素は競技性と表現性であるが、ビデオゲームジャンルにおいてアドベンチャーはきっと唯一競技性(ゲーム性でもいい)を無視することが許されるジャンルだと思う。他のジャンルならRPGにしろ、いくらストーリー主導といっても競技性部分とのバランス取りに気を使わなければならない。

 

 そしてビデオゲームから競技性を取り払った時に残るのが表現性となるが、大衆芸術およびエンタメにおいて表現とは受け手の感情と行動を作り手の思い通りに操る形で表れることが多いのだけれど、その方向で表現性を高めることはインタラクティブ性(プレイヤーの自由度でもいい)を狭めることが確実で手っ取り早い。だから表現性を評価されるゲームがしばしば映画(小説の場合もある)と比べられるのだ。

 

 『The Walking Dead』とはゾンビが蔓延するポストアポカリプス的環境で2人のどちらかだけを助けられるならどちらを助けるかや人数分には大きく足らない食料を誰に与えるかなど答えの無い究極の決断をプレイヤーに強いるという、「映画の登場人物になった気分になれるゲーム」と説明されるかもしれない。そもそもゲームの流れはほとんどの時間を映像を見てたまに選択肢を選ぶというとても映画的なアドベンチャーゲームでありそのうえ選択の結果がシナリオに大きな変化を与えない死に瀕した2人のうち1人を苦渋の決断で助けようと次の日にはそいつは死ぬという始末、それなのに映画のそれとは全く別の意味で表現性が高いことに気付かされた。

 

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ミスター無能ことベン。こいつを助けるかどうかマジで悩んだうえの決断で助けたのに次の日テキトーな理由で死んだときはどうしようかと思った

 

 

 なぜなら『The Walking Dead』はこういったゲームや映画にありがちな制作者の哲学を読み取ろうみたいな国語のテストタイプでもなければ、制作者の用意したキャラクター感情移入体験を通して最後にプレイヤーの考えを問いかけるタイプでもない。絶え間ない制作者からの問いかけにプレイヤーは強制的に回答させられ続けるがその回答に対する評価はプレイヤー自身に自己採点させるというもの。制作者側はプレイヤーの決断に対する正解不正解を用意せずに回答だけを見せつけてくるのだ。自分の決断が正しいか間違っているか、善悪を判断するのはプレイヤー自身。プレイヤー自らの答えに対してプレイヤー自らが断ずるというのは斬新さだけでなく、自分と言う人間について考えさせるので、その表現力(プレイヤーに対する感情のゆさぶり加減)がすさまじいものとなる。

 

 このゲームは哲学だとか難しいメッセージ性だとか嫌いもしくは苦手な人ほどプレイすべきだ。(楽しめるかは別として)難しく考えずともプレイヤーの決断そのものがその人の人生観の一部であるはずだから。

 

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秀逸なのは主人公リーの最期を選べる(選ばされる)こと。どちらを選んでも展開(死)は変わらないがプレイヤーの哲学(人生の価値基準)を問われる。

 

 

 ビデオゲームにおいて入力元の人間と出力側のコンピュータのやりとりというのはコンピュータの出力にバリエーションの制限があり、その点においてインタラクティブ性(自由度)の壁があると思う。しかし問いに対する決断という入力元がプレイヤー自身であり、その決断を解釈する出力側もプレイヤーというのは全くインタラクティブ(双方向)ではないが、双方とも人であるが故にインタラクティブ性(自由度)のバリエーションの壁を崩したと考えられるのではないだろうか。もちろんただのアイデアに終わらず、長時間プレイヤーの興味を引き続ける技術と工夫に情熱を注いだ開発telltale gamesあればこそだ。