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アニメ?ゲーム?語る?(仮)……というのはうそでほとんど東京ヤクルトスワローズの話ばかりするブログ

アニメやゲームについてヨイショしたりヘイトしたりするブログ……というのはうそでほとんど東京ヤクルトスワローズの話ばかりするブログ

【映画レビュー】心が叫びたがってるんだ。長井龍雪、牙を剥く(ネタバレ無し)

映画 アニメ

www.kokosake.jp

 

恋愛あり、友情あり、まさに青春ドラマ

さわやかというよりもささやかな感動が生まれる

脚本良し作画良し演出良し

いつもの長井龍雪作品

 

 

……か???

(ネタバレなしですがうっすらと読むとストーリーが予想出来てしまうかもしれません) 

 

驚くほど、シナリオはいつもの長井でありいつもの岡田磨里だよ

正直なとこ「またかよ…」と思う部分もあるくらいシナリオ構成が同じ

ただシナリオ制作に時間をかけただけあって完成度は一番高い

無駄なシーンは一切なしで地味なドラマ中でも飽きさせない特急カット

少々説明台詞が過多なとこもあるけどテンポ良くシーンが進むからうざくならない

 

作画も丁寧で綺麗だし、演出も通常運行5割増しくらいキレてる

ささやかな喜びと心に染み込むような感動があって泣けた。いい映画だった

 

 

じゃあ面白かったと聞かれると……面白かった……かなぁ?

なんというか後味悪いというかちょっと嫌な感情が残るんですよ

それは別にシナリオ展開やオチが不満だったとかじゃなくて、むしろあれがいいと思っているんですけど、なんかこの映画に対する感情にモヤモヤというかイライラみたいなものが混じっている……なぜか……?

 

この映画のテーマってシナリオ上は「言葉の大切さ」とか「気持ちを伝えること」とかそういったものなんだけども

この映画制作の最大のテーマは「実在感のあるキャラクターにみせる」ことだと思うんです

インタビューでもキャラクターを丁寧に突き詰めていくことが目標と語ってましたし

アニメ実写どちらでも類をみない実在感のあるキャラクターになってます

 

シナリオは起承転結整っているけれどもあくまで優先されているのは人物描写で

キャラクターを見せるためのシナリオなんです

そしてそのキャラクターは観客が憧れたり好きになったりするような魅力的なキャラクターとしてではなくて実在感のあるキャラクターなんです

ふつうリアリティのあるキャラクターって利己的だったり精神的に弱い部分にフォーカスしたりして嫌な奴として描かれることが多いんですけど

この映画に出てくる人物って全員善人なんです

利己的なキャラクターはいないしイジメも皆無

 

でもね

この映画の人物ってものすごく冷めやすいんですよ

カッと熱くなって喧嘩してもすぐに頭が冷えてしまう

クラスでミュージカルを作ることになって盛り上がっても宗教的な熱狂度が無くて70%くらいのやる気というか「出来る範囲で協力してくれればいいよ」みたいなこと言い出すんですよ

 

京アニの『響け!ユーフォニアム』なんて体育会系特有の宗教的な一体感で部活に取り組むような熱さに巻き込まれるストーリーだし、劇中でも先輩の一人が「やる気なかったときもやる気になった今も流されてるだけなんじゃないか」と言及するくらい

 

でも『ここさけ』のクラスは流されても熱狂はしてない

クラスだけならクラス行事だしこれくらいのやる気でもやる気ある方でしょう、というリアリティで済むが

甲子園を目指している野球部とそのキャプテンの描写を「こいつらじゃ無理だろう」と思わせる程度の熱狂度に抑えているところが怖いほどリアル

練習をサボっているシーンがリアリティあるのではなくて、練習中のシーンで口では頑張ってるといいながら真面目に練習しながらも手を抜いている気がする描写が凄い

 

とはいえクラスメートも部員も全員良い奴なんですよ

だからこそ主役級4人も含めて何考えているのか分からないような宇宙人っぽさがある

脚本や演出が下手だからキャラクターが何考えてるか分からないんじゃないんですよ

むしろキャラクターの行動動機はすごく分かりやすく丁寧に齟齬なく描けてる、そのうえで空恐ろしさがある

この宇宙人っぽさがキャラクターを嘘くさくするのではなく、真実味を増してる

高校生に限らず人って誰でも何考えてるか分からない宇宙人っぽさを持っていてなおかつ実は何も考えてないということを気づかされる表現力(怖ろしさ)がこの映画にはある

 

きっとその表現力はアニメだからこそ出来てることでもあるんですよ

実写でどんなに上手い役者が演じても観客にとっては人間を見慣れてるから気づけない

しかしアニメとして再構成してデフォルメやシンボル化することで無意識に見て見ぬふりをしていた部分に無意識に気付かされるんです

 

現代の若者のドライさ、「善意のつもりが悪意として伝わってしまう」を超えた「自分では善意のつもりがそもそも自分には善意なんてない」感じ

 

 

ファンとして長井龍雪を評価していたつもりだったが過小評価していた

傑作っちゃ傑作なんだけど……俺にはまだ判断しきれない作品

日常系アニメの最先端はとんでもない未知の世界

これからは畏怖をもって長井作品観ることにするよ