【映画レビュー】アニメ映画『虐殺器官』は文句なしの傑作
さすが伊藤計劃!!
この女子率の高さよ!(笑
女子率の高さに(素人童貞の)シェパードさんも涙w
多分、半分以上は女性のお客さんだったはずです
その証拠に劇場CMは
高校生恋愛実写映画
↓
MY FIRST STORYのドキュメンタリー
↓
XJAPANのドキュメンタリー
↓
アニメ映画
というカオスでしたw
___といきなり脱線しましたが映画『虐殺器官』は超がつくほど傑作でした
村瀬修功監督のことは信頼していたので心配はそれほどしてなかったのですが、期待をはるかに超えるクオリティと表現でありました
みなさん観ましょう
もうこの映画の全てが好きなんです
原作既読者からは原作からの改変に対して賛否あるかもしれませんが私は完璧に賛成です
稀代の傑作である原作を超えたとか言うわけじゃないんです
原作にあったある深みは無くなってしまっています
でも原作を読んだ時には気づけなかった魅力に気づかされるというか
別の濃さが出てます
村瀬修功解釈というよりも元々原作が持っていた魅力を引き出しています
以下ネタバレあり
原作ファンが主に不満を持つ改変は恐らくココ、というのは2つあるでしょう
しかしその2つの改変こそが私の絶賛ポイントであります
①キャラクターの内面を削除
主人公シェパードと母の関係についてはバッサリ削られてます
彼が頭の中で行う思考描写もカット。そのためシェパードは比較的普通の人に近い印象を受けます(それでも少し変人ではありますが)
シェパードの考え≒伊藤計劃の考えであり、魅力ではありました
しかしそこが強すぎて本作のテーマのひとつであった『罪と罰』というものを読者自身の身近に感じることが難しかったのではないでしょうか
原作でのシェパードが作る最後の虐殺は大いにカタルシスがありますが、読者のなかにシェパードと同じ行動を取ると言う人は少ないのではないでしょうか。シェパードと同じような親子の悩みを抱える人はそれなりにいるであろうにです
映画の描き方ではシェパード≒観客であり、戦争や監視社会と自由のトレードなどといった『罪』を観客自身のものとダイレクトに伝えていると思います
②最後の虐殺描写の削除(虐殺の文法の表現)
村瀬監督がもっとも難しいと語った虐殺の文法の表現。抽象的な表現もなく、その後の虐殺の描写もなし。でも描かなかった(逃げた)わけではありません。裏ワザ的ではありますが私はこれで完璧な表現だったと感じます
虐殺の文法を持って帰ったシェパードがその文法を使ったスピーチを作っている描写。それこそが虐殺の文法の表現だったのだと私は解釈しました
実写だったなら安易な表現に逃げたと糾弾しましたけど、緻密なアニメートで描かれると話は別です
あのシェパードがテレビのニュースを観ながら虐殺の文法を用いたスピーチ案を練りポストイットに書いていく姿。不気味でありながらも自然であり、それこそが我々が『仕事』だからと良心を抑制して『罪』を重ねていく姿そのものではないでしょうか
虐殺の文法が魔法では無く、眼に見えない形で存在していて、自分たちが意識せずに使ってしまっている(のでは?)と思わせる凄い描写です
原作では今そこにある闇から新たな未来へと伊藤計劃が導いていくのに対して
映画では『This is my story』というちょっと臭すぎる文面も含めて、むしろより身近に近づいてくるような感触があります