ライムスター宇多丸さんの映画『心が叫びたがってるんだ。』への批評について。そして私の長井龍雪感(ネタバレ有り)
ネタバレ有り
ライムスター宇多丸さんの『ここさけ』感想のラジオ聴きました
俺もそう思うわ(爆
俺は前のプチレビューで述べたように『ここさけ』は傑作だと思う
それに宇多丸さんもラジオの中で『ここさけ』を結構褒めてたしね
やっぱいい映画なんだよ『ここさけ』は。
ただまあ不満として挙げてる点はもっともです
ネットでまとめサイトなんかでは宇多丸さんが酷評してるみたいにサブタイトルつけられてるけど褒めてんじゃん
『バケモノの子』より褒めてるでしょ、これ(爆
特に宇多丸さんがおっしゃっていた
・脇役のクラスメイト等が物語に奉仕しない自然な描写が良い
結局これが長井監督の一番表現したかった部分なんですよ。
そもそも群像劇にしたいというのは監督のオーダーであり、クラスメイトの細かなセリフなどは脚本岡田が書いたものではなく監督が自分で付け加えた部分なんです
ミュージカル制作途中の描写も同様のはずなのでやはりここらへんは長井センスが濃いんですね
脚本岡田より長井監督の方が上手いなら、じゃあ全部脚本も監督が書けよっていう話なんですけど俺もそう思うわ(笑
ただ宇多丸さんの意見に反論したいのは次の指摘
・結局解決して(救われて)いないんじゃないか
親子問題や拓実の救いが描かれていないということなんですが、これはちょいと反論しますよ
それが長井龍雪の価値観なのですよ
(私の勝手な妄想込みですけど)長井龍雪という人間のドライさがあえて安易な感情の吐露で救われるという描写をさせないのだと思いますよ
劇中の台詞で「誰が悪いのでもない」というのがまさにそのまんま表わしていて、親へ反抗する前に子供が勝手に納得してしまう、というのが彼(ら)のリアリティなのだろうと。
だから『ここさけ』で起きた問題ってすれ違いなのだけど、感情の吐露によってすれ違った箇所を双方が理解して問題が解決するのではなく、片方ずつの『気づき』によって解決してる。順と泉しかり、順と拓実しかり。
(ちょっと強引ではあるけれど)拓実の問題はラストのラブホでの順の言葉を聞くことによって拓実が涙を流した時点で解決しているわけだ
物語としてのカタルシスが欠けるけれど「現実ってそういうもんでしょ」というドライな表現に意識的にしてる
長井龍雪の哲学は『弱者救済』であり描く世界観にはセーフティネットが敷かれるけれど
長井龍雪自身の価値観としては常に少し冷めている
本人が自分たちの作るキャラクターにはどんどん感情移入しているけれど
現実の世の中には信頼を置いていない
新作アニメ『鉄血のオルフェンズ』での主人公の子供達の万能感や大人への不信は『進撃の巨人』をはじめとした売れ筋のマーケティングが大部分ではあろうが、監督自身の感覚もちょっと入ってるとも思う
長井龍雪の制作スタンスである、他人への指示は即断即決、そのかわり撮影での修正では延々と粘り続けるというのことや
アニメーター出身ではないが原画に参加の幅を広げたりするのも彼の価値観に関係してる気がする